火曜の午後、決算書を前にした社長

火曜の午後、東京・城東エリアの小さな事務所で、金属加工を営む社長は腕を組んでいた。机の上には、税理士から届いたばかりの決算書。売上は前年より4%伸びていた。それなのに、通帳の残高はむしろ減っている。指先で数字をなぞりながら、社長は小さくため息をついた。

「利益は出てるはずなのに、なんで金が残らないんだ」

この問いは、東京の中小企業の経営者から何度も聞くものだ。創業32年、従業員は12名。バブル崩壊もリーマンショックもコロナ禍もくぐり抜けてきた会社である。だが、数字と正面から向き合ったことは、実のところほとんどなかった。決算は税理士に丸投げ、資金繰りは「なんとなく残高を見て判断する」やり方で回してきた。

先日ある経営者の方とお話ししていたら、まったく同じことを口にしていた。「黒字なのに苦しい」。これは決して珍しい話ではない。売上の増加に伴って仕入れや外注費が先に出ていき、入金は2か月先。運転資金の負担が重くなり、手元の現金が細っていく。いわゆる「勘定合って銭足らず」の状態だ。

社長はスマホを手に取り、「財務 相談 東京」と検索窓に打ち込んだ。無数のページが並ぶなかで、 財務相談はどこに?東京の中小企業が選ぶ3つの窓口 という記事に目が留まった。読み進めるうちに、自分がずっと避けてきた「数字の話」に、そろそろ向き合う時が来たのだと気づいた。窓の外では、夕方の環七を大型トラックが列をなして走っていた。

「顧問税理士がいるのに、なぜ?」という疑問

翌週、社長は財務コンサルタントとの初回面談に臨んだ。開口一番、彼が口にしたのは当然の疑問だった。「うちには20年付き合ってる顧問税理士がいる。それでも財務コンサルティングが必要なのか?」

コンサルタントは静かにうなずいてから、こう語った。税理士の仕事は、過去の取引を正しく記録し、税金を適正に申告すること。いわば「後ろを振り返る」役割だ。一方で財務コンサルティングは、その数字を使って「これからどう手を打つか」を一緒に考える。時間の向きが違うのだ、と。

社長の表情が少し動いた。思い当たることがあったのだ。決算書は毎年もらうが、それを見て来期の設備投資や借入をどうするか、相談できる相手がいなかった。銀行の担当者は融資の話にしか乗ってこない。税理士は「税金が増えますよ」としか言わない。誰も、経営の舵取りそのものを一緒に考えてはくれなかった。

中小企業の財務コンサルは何をする?診断士が実務を解説 にも書かれているとおり、財務コンサルの実務は幅広い。資金繰り表の整備、月次での数字の確認、金融機関への説明資料づくり、利益計画の策定。どれも「数字に強い経営」を支える地味な作業だが、これが積み重なると経営の景色が変わる。

面談の終わりに、コンサルタントはひとつの数字を示した。「まず3か月、資金繰り表を一緒につくりましょう。3か月先の残高が見えるだけで、判断の質が変わります」。社長は初めて、数字が敵ではなく味方になりうると感じた。

資金繰り表という「地図」を手に入れる

最初の作業は、資金繰り表づくりから始まった。過去12か月の入出金を洗い出し、これから3か月分の見込みを埋めていく。地味な作業だが、埋めていくうちに社長の顔色が変わった。

2か月後の月末、資金がショート寸前まで細ることが、はっきりと数字で見えたのだ。原因は明快だった。大口の受注が入り、材料費と外注費が先に120万円ほど出ていく。だが売掛金の回収は、そのさらに翌月。入金までのタイムラグが、手元の現金を一時的に枯渇させる構造だった。

「これ、見えてなかったら…どうなってたんだ」。社長は青ざめた。今までは月末になって「あれ、足りないぞ」と慌て、慌ててノンバンクから高い金利で借りたことも一度や二度ではなかった。資金繰り表という地図があれば、2か月前から手を打てる。

埼玉の中小企業が資金繰り改善する3つの起点 で紹介されている考え方は、東京の中小企業にもそのまま当てはまる。資金繰り改善の起点は、①入金を早める、②出金を遅らせる、③そもそもの利益率を上げる、の3つ。社長の会社では、まず取引先に支払サイトの相談をし、回収を平均15日前倒しできた。それだけで、月末の残高不安がぐっと和らいだ。

コンサルタントは言った。「資金繰りは、経営の血流です。詰まる前に流れを整える。それが伴走する私たちの仕事です」。社長は資金繰り表を印刷し、事務所の壁に貼った。数字が、初めて日常の道具になった瞬間だった。

東京の中小企業ならではの事情

東京で商売をするということには、独特の重さがある。家賃が高い。人件費も地方より1〜2割は高い。人材の流動も激しく、採用してもすぐ大手に引き抜かれる。都心の一等地に事務所を構えれば固定費だけで毎月何十万円も飛んでいく。

コンサルタントは、東京の中小企業を数多く見てきた経験から、こう指摘した。「固定費の重さを、売上でカバーしようとしすぎるんです。だから無理な受注を取って、かえって資金繰りを悪くする」。社長は思い当たった。去年、採算の合わない大口案件を「東京で名の通った会社だから」と受けてしまい、結局ほとんど利益が残らなかったことを。

一方で、東京には強みもある。取引先も金融機関も選択肢が豊富だ。地元の信用金庫だけでなく、複数のメガバンクや地方銀行の支店が身近にある。財務の数字をきちんと整えておけば、融資条件の交渉余地が生まれる。 東京の中小企業向け 財務コンサル の現場では、金融機関に「この会社は数字を把握できている」と信頼されることが、そのまま調達力につながっていく。

先日、別の東京の経営者からこんな相談を受けた。「銀行を1行としか付き合っていない。それって危ないですか?」。答えは、状況によるが、多くの場合は2〜3行と関係を持っておくほうが安心だ。1行に依存すると、その銀行の方針転換で資金調達が一気に不安定になる。東京という金融機関が密集した土地の利を、活かさない手はない。数字に強い経営とは、こうした選択肢を戦略的に使うことでもある。

月次で数字を見る習慣が生まれた

財務コンサルティングを受け始めて3か月。社長の会社に、ひとつの習慣が根づいた。毎月第2営業日、コンサルタントと1時間、前月の数字を振り返る「月次ミーティング」だ。

最初のうち、社長はこの時間を面倒に感じていた。忙しい月初に1時間も座って数字を見るなんて、と。だが3回目あたりから、彼の態度が変わった。前月の粗利率が、目標の28%に対して24%しかなかった月があった。原因を掘り下げると、特定の得意先向けの製品だけ、材料の値上がりを価格転嫁できていなかったことが判明した。

「これ、月次で見てなかったら、決算まで気づかなかったな」。社長はつぶやいた。年に1回の決算でしか数字を見なければ、問題に気づくのは11か月遅れになる。月次で見れば、翌月には手を打てる。この差は、1年で積み上がると数百万円の利益差になる。

コンサルタントが伴走する意味は、まさにここにある。数字を出すだけなら会計ソフトでもできる。だが、その数字が「何を語っているか」を一緒に読み解き、次の一手を考える相手がいるかどうか。それが経営の質を分ける。 財務・経営ブログ一覧 には、こうした月次管理の具体例が数多く紹介されている。

半年が過ぎるころ、社長は取引先との雑談でこう言っていた。「うちも、ようやく数字で経営するようになってな」。かつて決算書を前に腕を組んでいた男が、いまは自分の言葉で経営の数字を語っている。変化は、静かに、しかし確実に起きていた。

セミナーで学び、視野が広がった

ある土曜日、社長はコンサルタントに勧められて、無料の財務セミナーに足を運んだ。会場には、同じような規模の中小企業の経営者が20人ほど集まっていた。業種は飲食、建設、小売とばらばらだが、抱える悩みは驚くほど共通していた。

「利益は出てるのに現金が残らない」「銀行にどう説明していいかわからない」「後継者に会社を渡すとき、数字がぐちゃぐちゃで困る」。参加者の一人がそう漏らすと、会場のあちこちで深いうなずきが起きた。社長は、悩んでいるのは自分だけではなかったのだと、妙に安心した。

セミナーでは、決算書の読み方の基本から、資金繰り改善の具体策まで、2時間でコンパクトに学べた。特に印象に残ったのは、「自己資本比率」の話だ。この会社は当初18%と、やや低めだった。業種にもよるが、30%を超えると財務的にかなり安定するとされる。社長は「うちの数字はどのあたりなんだ」と、初めて自社を客観的な指標で捉えた。

こうした学びの入口として、 財務セミナー(無料) で全体像をつかむのは有効だ。いきなり顧問契約を結ぶのはハードルが高いと感じる経営者も、まずは学びの場から一歩を踏み出せる。東京はもちろん、埼玉など各地で開催されており、リモートで参加できる回もある。

セミナーの帰り道、社長は資料を鞄にしまいながら考えていた。数字は難しいものだと思い込んでいた。だが本当は、教わる相手さえいれば、経営者でも十分に扱えるものだった。知らなかっただけで、恐れる必要はなかったのだ。

一年後、社長が後輩に語ったこと

財務コンサルティングを受け始めて、ちょうど1年。社長の会社では、いくつかの数字がはっきりと変わっていた。手元の現金は、最も少ないときの月商0.8か月分から、1.5か月分にまで積み上がった。粗利率は24%から28%へ改善し、自己資本比率も18%から23%へ上向いた。無理な受注を断る勇気も持てるようになった。

ある日、創業して間もない後輩経営者から相談を受けた社長は、こう語ったという。「俺もな、決算書なんて税理士に任せときゃいいと思ってた。でも、それじゃ経営してることにならなかったんだよ」。後輩は真剣な表情で聞き入っていた。

「数字は、責めるためのものじゃない。次の一手を決めるためのものだ。誰かと一緒に見ると、不思議と怖くなくなる」。社長の言葉には、1年前の自分への実感がこもっていた。

伴走してくれる相手がいることの価値を、社長は身をもって知った。財務コンサルティングは、魔法ではない。地味な資金繰り表を毎月埋め、月次で数字を振り返り、少しずつ改善を積み重ねる。その繰り返しが、1年後にはっきりとした差になって現れる。 埼玉の中小企業が財務コンサルを使う3つの場面 にも、同じような変化の物語が綴られている。

株式会社ザイプラは、中小企業診断士が東京・埼玉を中心に、神奈川・千葉、そしてリモートで全国の中小企業の財務に伴走している。初回相談は無料だ。かつての社長のように「黒字なのに苦しい」と感じているなら、まずは一度、数字を一緒に眺めてみるところから始めてもいい。窓の外の景色が、少しだけ違って見えるかもしれない。