決算対策は「決算3か月前」から始まる

診断士:今日は決算対策について、東京で製造業を営むA社長とお話ししていきます。よろしくお願いします。

A社長:お願いします。うちは決算が3月なんですが、いつも1月か2月になってから税理士さんに「今期は利益が出てますね」と言われて慌てるんですよ。

診断士:それ、実はいちばん多いパターンなんです。先日ある経営者の方とお話ししていたら、決算月の2週間前に「500万円の利益が出そうなので何とかしたい」とご相談があって。でも2週間では打てる手がほとんど残っていませんでした。

A社長:2週間じゃダメなんですか。

診断士:決算対策には「時間がかかる手」と「直前でも打てる手」があるんです。設備投資の検討や保険の見直し、役員報酬の設計などは、少なくとも3か月前から動かないと間に合いません。逆に慌てて節税だけを目的にお金を使うと、資金繰りが一気に悪化します。

A社長:節税のつもりが、かえって現金が減ると。

診断士:そうなんです。たとえば30万円の税金を減らすために100万円の経費を使えば、手元から70万円が純粋に流出します。これは節税ではなく、ただの資産の目減りです。決算対策で最初に意識してほしいのは、「税金を減らす」ことと「会社にお金を残す」ことは別物だということ。この順番を間違えると苦しくなります。東京の中小企業は家賃や人件費の固定費が高い傾向があるので、現金を減らす判断には特に慎重でありたいところです。まずは全体像をつかむために 中小企業の財務コンサルティングとは を一度のぞいてみると、税理士との役割の違いも見えてきます。

A社長:なるほど、まず3か月前に着地見込みを立てるところからですね。

利益の着地見込みを早めに把握する

A社長:具体的には、まず何から手をつければいいんでしょう。

診断士:決算対策の出発点は「利益の着地見込み」を数字で押さえることです。今期があと3か月あるとしたら、残り3か月の売上と経費をざっくり予測して、年間でどのくらいの利益になるかを見積もる。ここが曖昧なまま対策を打つと、全部が勘になってしまいます。

A社長:うちは月次試算表を税理士さんからもらってはいるんですが、2か月くらい遅れて届くんですよ。

診断士:それが東京の中小企業でもよくあるボトルネックで。月次が2か月遅れると、決算対策のタイミングを完全に逃します。理想は月次を翌月15日までに締めること。そうすれば決算3か月前の時点で、直近9か月の実績が手元にあるわけです。残り3か月を予測すれば、精度の高い着地見込みが作れます。

A社長:9か月実績に、残り3か月の予測を足すと。

診断士:そうです。先日ご相談いただいた東京都内のサービス業では、月次を翌月10日締めに変えただけで、決算対策の選択肢が倍くらいに増えました。早く数字が見えるというのは、それ自体が武器なんです。予測と実績を突き合わせる予実管理の進め方については、 予実管理と月次の伴走を行う財務顧問 の考え方が参考になります。

A社長:着地見込みで、たとえば800万円の利益が出そうだと分かったら?

診断士:その800万円に対して、どこまでが「本当に残したい利益」で、どこからが「対策を検討する余地のある部分」かを切り分けます。全部を節税で消す必要はなくて、むしろ適正に納税して内部留保を厚くするほうが、銀行評価や将来の投資余力につながるケースが多いんです。数字に強い経営の第一歩は、この切り分けを感覚ではなく数字で行うことにあります。

節税と資金繰りのバランスを取る

A社長:やっぱり経営者としては、税金はなるべく減らしたいのが本音でして。

診断士:その気持ちは自然です。ただ、決算対策で一番危ないのが「節税のために使うお金」で資金繰りを崩すこと。たとえば利益800万円に対して法人税等がざっくり実効税率30%前後だとすると、納税額は240万円程度です。この240万円を減らそうとして、効果の薄い経費に500万円使えば、手元からは500万円出ていく。残るのは節税できた150万円分だけで、差し引き350万円の現金が消えます。

A社長:数字にするとゾッとしますね。

診断士:だから私たちは「出ていくお金」と「戻ってくる効果」を必ず両方並べて見ます。保険を使った対策も、将来の解約返戻金のタイミングと、その時の出口戦略まで設計しないと、ただの繰り延べで終わります。

A社長:繰り延べ、というのは。

診断士:今年の税金を来年に先送りしているだけで、トータルの税負担は減っていない、という状態です。悪いわけではないですが、「節税した気」になって資金繰りの実態を見落とすのが怖い。資金繰り改善の視点からは、むしろ納税を織り込んだうえで、半年先の資金ショートを防ぐほうが優先度は高いです。

A社長:半年先ですか。

診断士:決算月の2か月後に法人税の納付がやってきます。さらに消費税もある。つまり決算で利益が出るほど、数か月後に数百万円単位の納税資金が必要になるんです。先日お会いした東京の卸売業の方は、決算対策で現金を使いすぎて、納税月に資金ショート寸前になりました。決算対策は節税額だけでなく、納税資金と運転資金を確保したうえで考えるのが鉄則です。この資金繰りの全体像づくりは 東京の中小企業向け財務コンサル でも中心的なテーマにしています。

役員報酬と設備投資で打てる手

A社長:3か月前から打てる具体的な手って、どんなものがありますか。

診断士:代表的なのが役員報酬の設計です。ただし役員報酬は期の途中で自由には動かせません。基本的に事業年度開始から3か月以内に決めた金額を1年間維持するルールなので、来期に向けた設計を今から考えるイメージになります。決算対策というより「来期の対策を今期の決算を見ながら仕込む」感覚ですね。

A社長:今期の報酬はもう動かせないと。

診断士:原則はそうです。だからこそ着地見込みを早く把握することが効いてきます。来期の着地が読めれば、来期の役員報酬をいくらに設定すれば法人と個人のトータルで最適かを、3か月前から試算できます。報酬を上げすぎると個人の所得税・住民税・社会保険が増え、低すぎると法人に税金が集中する。このバランスを数字で詰めるわけです。

A社長:設備投資はどうでしょう。うちは機械の更新を検討してまして。

診断士:設備投資は決算対策と相性がいいケースがあります。一定の要件を満たせば特別償却や税額控除が使える制度があるからです。ただし大前提は「事業に必要な投資かどうか」。税金を減らすためだけに不要な機械を買うのは本末転倒です。必要な投資なら、タイミングを決算期に合わせることで節税効果も得られる、という順番で考えます。

A社長:本当に必要なものを、いいタイミングで買うと。

診断士:そうです。制度の適用要件や金額の判断は税務の専門的な領域なので、必ず顧問税理士と確認してほしいところです。私たちはその判断材料となる資金繰りシミュレーションと投資回収の試算をお手伝いします。管理会計の考え方で投資判断を行う方法は 管理会計の導入が中小企業をどう変えるか で詳しく触れています。制度頼みではなく、投資が3年でどれだけキャッシュを生むかまで見ると、決算対策の質が変わります。

銀行評価を落とさない決算書の作り方

A社長:節税を頑張りすぎると、銀行の評価が下がるって本当ですか。

診断士:本当です。これは東京の中小企業で特に意識してほしいポイントで。決算で利益を限界まで圧縮すると、決算書上の利益がほとんど残りません。銀行は融資審査で利益や自己資本を重く見るので、「節税しすぎた決算書」は借入のときに不利に働きます。

A社長:節税と借りやすさが、反対方向に動くんですね。

診断士:そうなんです。たとえば利益を限界まで消して税金を数十万円減らしたとして、その結果、来期に希望していた3000万円の設備資金が借りられなかったら、意味がないですよね。

A社長:確かに。桁が違う。

診断士:だから決算対策は「税金」「資金繰り」「銀行評価」の3つを同時に見るバランスの話なんです。先日ある東京都内の経営者の方は、毎年ギリギリまで節税していた結果、自己資本比率が5%台まで下がっていて、追加融資を断られていました。方針を変えて適正な利益を3期ほど積んだら、自己資本比率が20%を超えて、金利の交渉までできるようになったんです。

A社長:3期で、そんなに変わるんですね。

診断士:決算書は銀行に対する会社の履歴書のようなものです。地元の金融機関とは長い付き合いになりますから、毎期の決算書で信用を積み上げる意識が効いてきます。もし業績が厳しくて返済条件の見直しが必要な局面なら、早めの相談が鍵になります。 リスケの銀行交渉支援で資金繰りを立て直す事例 のように、交渉は準備で結果が変わります。決算対策を「節税ゲーム」ではなく「信用づくり」として捉え直すのが、伴走する立場からのおすすめです。

東京の中小企業ならではの決算対策の注意点

A社長:東京ならではの注意点って、何かありますか。

診断士:まず、東京は固定費が高い。家賃、人件費、オフィス関連のコストが地方より重くなりがちです。だから利益が出ているように見えても、現金の余裕は意外と薄いことが多い。決算対策で現金を使う判断は、地方以上に慎重であるべきです。

A社長:うちも家賃だけで年間相当な額が出ていきます。

診断士:もう一つは、東京は取引先の数も規模も大きくて、売掛金の回収サイトが長いケースがあること。決算で利益が出ていても、その利益が売掛金の形でまだ入金されていない、という状況が起きやすい。帳簿上の黒字と手元現金のギャップが大きいんです。

A社長:黒字なのにお金がない、というやつですね。

診断士:まさにそれです。だから決算対策では、利益の数字だけでなく、売掛金・在庫・買掛金のバランス、つまり運転資金の構造まで見ます。先日お会いした東京の内装業の方は、決算時点で利益が600万円出ていたのに、売掛金が3か月分たまっていて、納税資金が足りませんでした。

A社長:3か月分の売掛は重いですね。

診断士:回収サイトを1か月短くできれば、資金繰りはかなり楽になります。決算対策と並行して、回収や支払いの条件を見直すのも立派な財務改善です。東京は地元金融機関だけでなく、複数の金融機関と付き合いやすい環境でもあるので、融資の選択肢を広げておくのも手です。こうした地域事情を踏まえた支援内容は 中小企業診断士による支援の内容 にもまとめています。まずは無料の 財務セミナー で全体像をつかむのも、決算対策の第一歩として入りやすいはずです。

顧問税理士と財務コンサルの役割を分ける

A社長:税理士さんがいるのに、財務コンサルも必要なんですか。正直そこが気になってまして。

診断士:いい質問です。役割が違うんです。税理士は税務申告と税務の最適化のプロ。一方で私たちが担うのは、経営者と一緒に数字を読み解いて、資金繰りや将来の意思決定を設計する部分です。決算対策でいえば、税理士が「この経費が使えます」と教えてくれるのに対し、私たちは「その経費を使うと半年後の資金繰りがどうなるか」を一緒にシミュレーションします。

A社長:節税の手段と、その先の資金の動きを分けて見ると。

診断士:そうです。両方そろって初めて、安心して決算を迎えられます。費用感が気になる方も多いので、料金はあらかじめ 財務コンサルティングの料金・費用 で公開しています。顧問税理士とも連携しながら進めるので、どちらかを選ぶ話ではありません。

A社長:連携してもらえるなら安心です。

診断士:先日、東京の飲食業の経営者の方から「決算のたびに不安で眠れない」とご相談があって。月次を早め、着地見込みを3か月前に出し、納税資金を別口座で積む仕組みを作ったら、翌年の決算では「今年は余裕を持って迎えられた」と言っていただけました。仕組みが回り始めると、不安が減るんです。

A社長:仕組み、ですか。

診断士:決算対策は毎年訪れます。その都度ゼロから慌てるのではなく、数字が自動的に見える状態を作っておく。それが数字に強い経営であり、私たちの伴走の目指すところです。株式会社ザイプラは東京・埼玉を中心に、中小企業診断士が初回相談無料で対応しています。決算月まで3か月を切る前に、一度 お問い合わせ・無料相談 から気軽に声をかけてもらえればと思います。他の実例は 財務・経営ブログ にも並べていますので、決算対策の準備にお役立てください。