先週、さいたま市内で小さな製造業を営む社長と、閉店後のがらんとした事務所で資金繰りの話をしていて思ったのですが、数字に強い経営というのは、決して特別な才能の話ではない。月末の通帳残高に一喜一憂していたその社長が、わずか3か月で「来月の着地がだいたい読める」と言えるようになった。変わったのは能力ではなく、見る順番と仕組みだった。

さいたま市は人口130万を超える政令指定都市でありながら、事業者の大半は従業員20人以下の中小企業や個人事業だ。大宮・浦和の商業集積、岩槻の伝統産業、見沼エリアの中小製造業——顔ぶれはさまざまでも、相談の入口はよく似ている。「忙しいのに、なぜかお金が残らない」。この素朴な問いに、財務コンサルという視点がどう答えられるのかを、現場の肌感覚で書いてみたい。

さいたま市の中小企業が抱える「数字の空白」

まず断っておくと、さいたま市の中小企業が特別に経営がうまくいっていないわけではない。むしろ東京に近く、商圏は安定している。問題は、売上は見えているのに「お金の流れ」が見えていないという空白にある。

先日、大宮区で飲食店を2店舗営む経営者の方とお話ししていたら、月商は把握しているのに、仕入れ・人件費・家賃を引いたあとに手元にいくら残るのかを、感覚でしか答えられなかった。試算してみると、2店舗合計で月に約40万円の現金が「どこかに溶けている」状態。原因は、仕入れの支払サイトと売上の入金タイミングが20日ほどズレていたことだった。これは能力の問題ではなく、見える化されていないだけの問題だ。

私が財務の現場で最初にやるのは、難しい分析ではない。過去12か月の入出金を並べ、季節の山谷と資金の谷を一枚の表にするだけ。それだけで、たいていの社長が「うちはこの月に弱い」と自分で気づく。数字に強い経営の出発点は、分析力より前に「並べて眺める習慣」にある。財務コンサルティングが具体的に何を指すのかは 中小企業の財務コンサルティングとは で整理しているので、税理士との違いが気になる方は目を通してみてほしい。

資金繰り表が、月末の不安を数字に変える

さいたま市で相談を受けていて最も効果が早いのが、資金繰り表の導入だ。損益計算書は「儲かったか」を教えてくれるが、「お金が回るか」は教えてくれない。黒字なのに資金が足りない、いわゆる黒字倒産の芽は、ここに潜んでいる。

岩槻区で建具関連の加工業を営む会社では、受注は好調で売上は前年比15%増だった。ところが社長の表情は暗い。理由は、材料費を先に払い、入金は納品の2か月後。売上が伸びるほど、立て替えの現金が膨らんでいたのだ。年商ベースで考えると、売上が1,000万円増えるたびに、約170万円の運転資金が追加で寝てしまう計算になる。成長が資金を食う典型だった。

ここで作ったのが、13週先までを見る週次の資金繰り表。毎週金曜の夕方に残高見込みを更新し、2週間先に谷が来るなら前もって手を打つ。この仕組みを入れてから、社長は「借りるかどうかを慌てて決めない」経営に変わった。資金繰り改善は、派手な一手より、こうした地味な定点観測の積み重ねで効いてくる。実際に東京の事例では 銀行融資サポートで資金繰りを3か月分改善した話 のように、数字を先回りして見せることで融資交渉そのものが変わった。

地元金融機関との付き合い方を、数字で設計する

さいたま市の中小企業にとって、埼玉りそなや県内の信用金庫、地域の信用組合は資金調達の生命線だ。都市部でありながら、融資の現場は驚くほど「人と数字の信頼関係」で動いている。

よくある誤解が、「決算が良ければ貸してくれる」というもの。実際には、決算の数字そのものより、社長が自社の数字をどれだけ自分の言葉で語れるかを、金融機関の担当者は見ている。先日、浦和区のある経営者が融資面談を前に不安そうだったので、資金使途と返済原資を1枚にまとめ、月次の試算表を半年分そろえた。すると融資枠は希望どおり、金利も当初提示より0.3%ほど低い条件に落ち着いた。数字を準備した経営者は、交渉の主導権を握れる。

大事なのは、借りたいときだけ金融機関に顔を出すのではなく、四半期に一度は業績を報告しに行く関係を作ること。1年で4回、わずか各30分の訪問が、いざというときの数百万円の融資枠を左右する。この「平時の情報開示」こそ、伴走型で支える財務顧問が力を発揮する場面だ。埼玉での具体的な支援像は 埼玉の中小企業向け財務コンサル にまとめている。

月次決算の習慣が、意思決定を2か月早める

さいたま市の中小企業で、月次決算が翌月15日までに締まっている会社は、体感で3割に満たない。多くは2か月遅れ、ひどいと決算期末にまとめて数字が出る。これでは経営判断が常に後手に回る。

見沼区で物流関連の会社を営む社長は、以前は決算が出るのが3か月後だった。つまり、7月の業績を10月に知る。これでは夏の失速に気づいたときには秋が終わっている。月次を翌月10日締めに変えただけで、意思決定が実質2か月早まった。燃料費が想定より8%上振れしていることに8月のうちに気づき、運賃の値上げ交渉を前倒しできた。たった数週間の違いが、年間で数百万円の粗利を守る。

月次決算は経理のためではなく、社長の判断のためにある。私が伴走する際は、数字を出して終わりにせず、「この数字は何を意味し、来月どう動くか」を一緒に壁打ちする。これが財務顧問の中核だ。予実管理や月次の伴走の中身は 中小企業の財務顧問(月次の伴走) で詳しく触れている。数字を並べるだけなら表計算で足りるが、その数字から次の一手を引き出すには、問いを投げる相手がいると速い。

補助金・制度融資を「資金計画」に組み込む

さいたま市や埼玉県、各区の商工会議所は、中小企業向けの補助金や制度融資のメニューが比較的充実している。ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、県や市の制度融資——選択肢は多い。ただ、補助金は「もらえたら得」という発想で取りにいくと、たいてい途中で息切れする。

補助金はあくまで資金計画の一部だ。たとえば設備投資に500万円かかり、補助率2分の1で250万円が後から入るとする。ここで見落とされがちなのが、補助金は原則「後払い」だという点。先に全額を払い、入金は半年後ということも珍しくない。この半年の立て替え資金をどう手当てするかを設計しておかないと、採択されたのに資金が回らないという本末転倒が起きる。

埼玉での補助金活用がどう経営を変えたかは 補助金の申請支援で埼玉の中小企業が変わった事例 に具体例がある。申請の手間より、採択後のキャッシュフロー設計のほうが実は重い。私が関わるときは、補助金の入金時期まで織り込んだ資金繰り表を必ず作る。制度を使うことと、資金が回ることは、別の設計図なのだ。

社長の頭の中を、引き継げる仕組みにする

さいたま市の中小企業の強さは、社長個人の経験と勘にある。長年の取引先、職人の技、地域での信用。ただ、その強さが社長1人の頭の中だけにあると、事業承継や急な体調不良のときに、会社が一気に止まる。

大宮区で30年続く卸売業の会社では、社長が取引ごとの原価も入金タイミングもすべて暗記していた。見事ではあるが、後継者である30代の息子さんには何も引き継がれていなかった。そこで、頭の中にあった採算の判断基準を、取引先別・商品別の粗利一覧として紙に落とした。すると、実は売上上位の取引先の1社が、手間の割にほとんど利益が出ていないことが判明。年間で約60時間を費やしていた作業が、粗利ではわずか数%しか貢献していなかった。

数字に強い経営とは、社長の勘を否定することではない。勘を数字という共通言語に翻訳し、次の世代や幹部と共有できる形にすることだ。これができると、会社は社長が現場を離れても回り続ける。財務の仕組みづくりは、承継対策でもある。より多くの視点を知りたい方は 財務・経営ブログ一覧 や 財務セミナー一覧(無料) で、同じ規模の会社の工夫をのぞいてみるのもいい。

伴走者を持つという選択肢

ここまで書いてきて思うのは、財務の課題の多くは「知らない」からではなく「1人で抱えている」から解けないままになっている、ということ。さいたま市の中小企業の社長は、営業も現場も採用も1人でこなし、数字と向き合う時間が物理的に足りない。

中小企業診断士という立場で関わると、経営者の隣で月に1〜2回、1〜2時間、数字を見ながら次の一手を考える。たったそれだけでも、半年もすれば景色が変わる。ある会社では、伴走を始めて1年で、手元現金が月商の0.8か月分から1.5か月分へ厚くなった。急いで何かを削ったわけではない。毎月、少しずつ資金の谷を予測し、先回りで動いた結果だ。

費用が心配という声はよく聞く。目安は 財務コンサルティングの料金・費用 で公開しているので、投資対効果を自分の会社に当てはめて考えてみてほしい。株式会社ザイプラは東京・埼玉を中心に、中小企業診断士が伴走する財務コンサルティングを提供している。さいたま市内はもちろん、リモートでも対応可能だ。初回相談は無料なので、まずは 会社概要と支援内容 をのぞいて、月末の通帳を眺めるあの不安を、誰かと分け合うところから始めてみてはどうだろう。数字は、1人で睨むより、2人で並べたほうが、ずっと素直に語りかけてくる。