導入事例

一口に中小企業と言っても、業種も規模も様々です。1社として同じ会社や同じ状況はなく、財務の改善提案も異なりますが、ここでは3社の改善事例をご紹介いたします。

事例Ⅰ:運輸業 売上7億 社員50名

小売店へのルート配送を中心とした創業30年の運送業。売上は年々増加していたが、利益は横ばいが続いていました。そんな中、労働基準監督署の調査が入り、未払いの残業代を指摘され、現在の勤務体制も是正するよう命じられた。結果として人件費が増加し、さらに追い打ちをかけるように原油価格の上昇し燃料代が跳ね上がり、赤字に転落しました。
資金繰りは、車両購入による借入が多く、月々の返済が重たくのしかかる中、運転資金の新規融資を申込んだところ、銀行から融資を断られ、社長が資金繰りの相談に来られました。

まずは資金繰り対策

このままだと6か月以内に資金ショートするため、銀行に借入の返済条件の変更(リスケ)を申し入れました。これにより元金の返済を猶予してもらいました。また車両のリースバックにより、手元資金を確保しました。

本業の収益改善

ただ返済が猶予されたとは言え、本業の収支がマイナスであれば、ただの延命になってしまいます。銀行からも早急に事業計画書の提出を求められていたため、社長と二人三脚で事業計画の策定に取り掛かりました。
幸いにも本業の取引先の配送量は、店舗拡大により増えていました。また取引先別で収益性を見ていくとバラツキがあることも分かりました。そこで、不採算の取引に関しては、単価を上げられないかと考え、下請けとして受けている仕事は、元請から直接もらえるように働きかけました。また直接仕事を受けているにも関わらず採算が悪い取引に関しては値上げ交渉を行い、受入れてもらえない取引からは撤退をしました。
組織では、管理部門人員の肥大化が見てとれたため、一部の管理職を現場へ再配置し、1人当たりの生産性を向上させました。これにより1年後には黒字化を達成し、原油価格の下落による燃料費減少も追い風となり、事業計画書の予定通り5年後には銀行取引も正常化しました。

未来に向けて・・

現在はいたずらに増収を目指すのではなく、取引別の損益管理を行いながら、利益とキャッシュフロー重視の経営へと変わりました。今後は従業員への事業承継を予定しており、役員退職金を活用した「会社と社長個人ともにお金が残る」事業承継計画を策定し、実行しています。

事例Ⅱ:建設業 売上5億 社員15名

公共工事を中心とした設備工事業。新規事業として民間のリフォーム事業を開始していました。リフォーム事業は順調に拡大していましたが、売上増加による運転資金が大きくなり資金繰りが厳しくなってきたところで社長が相談に来られました。

何はともあれ資金繰りが最重要

まずは手元の資金繰りを安定させることから始めました。会社の借金内容を確認すると、全て証書による長期借入金だと分かったため、運転資金分に関しては、月々の返済がない手形による借入へと変更しました。
また節税も兼ねて含み損を抱えて遊休資産となっていた土地を売却し、そのお金で借入金を返済し、利息負担も軽くなりました。さらに銀行が見る決算書の評価も上がりました。

資金繰り悪化、赤字の真の原因を探る・・

本業に関しては、工事別で損益を出していったところ、積算が甘く、現場管理者のマネジメント不足から、工期が予定より長くなった公共工事では赤字になっている現場も多いことが分かりました。また資金の回収期間が長いことも資金繰り悪化の大きな要因となっていました。
そこで、社長の持つ地域の人脈と営業力をいかして、新規事業の受注に注力し、徐々に公共工事を減らしていくこととしました。資金繰りに関しても、公共工事の受注が減る事で運転資金が少なくなりました。さらに新規事業の民間受注に関しては、前受金をもらうなど入金サイトを短くすることに成功しました。
これによりさらに利息負担は軽減し、多くの利益が残るようになりました。

旧来の経理体制

そして経理に関しては、中小企業では多いのですが、現金主義で月次試算表を作成していました。このため、月々の売上や利益が実態と大きく乖離し、経営判断には全く役に立ちませんでした。
そこで、発生主義による試算表作成するため、税理士変更、会計ソフトも導入し、経理業務の効率化を図りました。

未来に向けて・・

現在では、月の中頃には、前月の売上や利益が把握できるようになり、決算の利益予測を立てています。これにより決算期にあわてて会社の節税対策をやるのでなく、役員報酬を下げ、将来の退職金を保険で積み立てる損金保険に加入するなど、先を見越した節税の方法を選んでいます。

事例Ⅲ:製造業 売上2億 社員20名

創業40年の自動車部品製造業。技術力に強みを持ち、徐々に業容拡大してきました。さらなる飛躍のため、新工場を建設した矢先にリーマンショックが起こり、売上が40%減少し、創業して初めて赤字の決算となりました。さらに父である創業社長が亡くなり急遽会社を引き継いだ2代目社長が「決算書の見方もわからない」と相談に来られました。

早急に収益改善するために・・

幸いにも、ある程度の内部留保があり、すぐに資金繰りに詰まることはなかったですが、収益改善のための事業計画を作成していきました。まずは社長の意思ひとつで変えられる保険の見直しから着手しました。節税目的もあり、必要以上の保障に加入していると判断し、解約や掛け捨ての保険に加入し直しました。
本業の落ちこみに関しては、外的要因が大きく、すぐの回復は難しいと判断しました。そのため、人件費に関しても削減せざるを得ない状況でした。そこで、一部ラインを休業にして助成金を活用したり、パート従業員の時間削減したり、定年退職者後の採用を見送ることで、可能な限り雇用を維持しながらも人件費を削減しました。
その後は、工場の稼働率を上げるため、新規受注に注力しました。景気の回復もあり、1年後には黒字化を達成しました。

未来に向けて・・

現在は「決算書の見方」や「財務」など経営の勉強を個別指導で受けていただいております。これにより経営者自身が財務に強くなるように取り組んでいます。今では事業計画も自社中心で作成し、全社員へ公表しています。さらに弊社コンサルタントが進行役となって社内会議も開催し、幹部が中心となって売上3億円を目指しています。