中小企業のための財務コンサルティング事例【セグメント別採算分析】
「このサービスって、実際いくら儲かってるんだろう?」
「新規事業を始めたけど、思ったより利益が出てない気がする…」
中小企業の現場では、売上や利益を全体でしか把握していないケースが非常に多く見られます。
しかし、それでは「どこが稼ぎ頭で、どこが足を引っ張っているか」が分かりません。
今回は、そんな“部分別の儲け”を明らかにする「セグメント別採算分析(部門別・商品別利益分析)」の事例をご紹介します。
◆ 事例企業:小売業C社(従業員20名・年商2.4億円)
- 業種:インテリア・生活雑貨の店舗販売+ECサイト運営
- 販売チャネル:都内実店舗2店舗+自社ECサイト
- 経営者の声:「全体では利益が出ているが、どこが本当に儲かっているのか不明」
◆ 現状の財務体制と課題
- 店舗別・チャネル別の収益性は未管理
- 広告費や人件費などの間接費が一括計上
- ECが伸びているが、利益にどう貢献しているかが不透明
社長の感覚では「最近はオンラインが伸びているけど、利益はどこから来てるのか分からない」とのことでした。
◆ 分析対象セグメントの設定
まず、以下の3つの事業セグメントに分けて分析を開始しました。
- 実店舗A店
- 実店舗B店
- 自社ECサイト
それぞれの売上・原価・販管費を可能な限り分解し、利益率を算出しました。
◆ 分析で見えてきた「真実」
| セグメント | 月商 | 粗利率 | 人件費等 | 営業利益 |
|---|---|---|---|---|
| A店 | 800万円 | 38% | 240万円 | ▲10万円(赤字) |
| B店 | 600万円 | 36% | 180万円 | +5万円 |
| ECサイト | 500万円 | 42% | 100万円 | +50万円(最も高収益) |
ECの利益貢献度が圧倒的である一方で、「売上トップ」のA店は実は赤字であることが発覚。
在庫ロス、営業時間の長さ、人件費比率の高さが主な要因でした。
◆ 実施した改善施策
① A店の運営効率見直し
- 営業時間を短縮し、シフト再編成で人件費を削減
- ECで売れ筋商品だけを厳選して店舗展開に反映
② EC部門への注力強化
- 配送業務を外注化し、リードタイムを短縮
- SNS広告の費用対効果を分析し、広告費配分を最適化
③ 店舗別予算とKPI導入
- 各セグメントに売上・利益目標を設定し、月次で比較管理
◆ 結果と社長の変化
- A店:赤字脱却、月間営業利益+15万円に改善
- EC:前年比売上120%、利益貢献を拡大
- 全体の月次営業利益が30万円増加
社長のコメント:「意思決定の基準が“感覚”から“数字”に変わった」
◆ まとめ:セグメント分析で経営の精度が変わる
会社全体の数字を見て「順調」と思っていても、その中に“利益を削る部門”が混ざっていることは珍しくありません。
セグメント別採算分析によって、現場ごとの収益性を明らかにすることで、正しい打ち手が見えるようになります。
特に以下のような中小企業には、セグメント分析は「最初にやるべき分析」のひとつです。
- 多店舗展開している
- ECと実店舗を併用している
- 商品・サービスの種類が多い
「本当に儲かっているのはどこか?」を知ることで、経営戦略の質は確実に高まります。
あなたの会社も、いま一度“部門ごとの収益”に目を向けてみませんか?
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